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2008.08/07(Thu)

“戦火の勇気” を “告発のとき”●告発のとき

自己批判は出来るか。


『in the valley of elah』

告発のとき - goo 映画

2004年、ハンクの元に息子のマイクが軍から姿を消したと連絡が入る。
イラクから戻ったマイクが基地へ戻らないというのだ。
ハンクも引退した元軍人だった。

息子の行動に疑問を持ったハンクは基地のある町へと向かう。
帰国している同じ隊の仲間たちに聞いても、皆マイクの行方を知らなかった。

やがてマイクの焼死体が発見されたという連絡が入る。
ハンクは地元警察の女刑事エミリーの協力を得て、事件の真相を探ろうとするが…。

監督・脚本・製作
ポール・ハギス

出演
トミー・リー・ジョーンズ
シャーリーズ・セロン
スーザン・サランドン
ジエームズ・フランコ
ジェイソン・パトリック


【More・・・】

◆以下の文章には、『告発のとき』と、『戦火の勇気』のねたばれを含みます。

作品的には文句ナシ。

物語は、息子の死の真相を探る父親という形を取っていながら、
静かにアメリカ人の、戦争に対する考え方の是非を問います。

アメリカ社会の象徴という役を担うのは、トミー・リー・ジョーンズ演じる元軍人の父親。
自分の人生に疑問を持つ事無く、子供達も同じ道を選んだ事を誇りに思っています。

しかし、自慢の息子が脱走したと聞き、真相を確かめる為に、基地へ向かいます。
基地では、黒焦げになった息子と対面し、自分の知らなかった様々な息子の姿を知り驚きますが、
最後に明かされる真相の後、自宅に戻ります。

自宅に届いていたのは、息子から父親への星条旗。
誇りに思っていた父親と同じ道を歩き、理想の軍人像と現実の自分の間で苦しみ、
戦場から勇気を振り絞って父親に弱音を吐き、ドラックと女で気を紛らわせていたにも拘らず、
父親を尊敬していた証し。

父親は、息子の星条旗を逆さに掲げ、二度と下ろさないと言います。
星条旗の逆掲揚は、国家の救難信号。
「このアメリカという国は、どうしようもない所まできている。助けてくれ」と。

アメリカの象徴としての父親役であるトミー・リー・ジョーンズが、
国家の救難信号を出すという自己批判を表し、
戦争に対する根本的な考え方の是非を、観客に投げ掛けて映画は終わります。

原題は「エラの谷」。
旧約聖書で、少年ダビデがパチンコ(投石器)を使って、
2.9メートルの巨人ゴリアテが戦った場所の事。

昔のパチンコ(投石器)は、冬に首に巻くマフラーの様な物で、中に石を入れて両端を持ち、
投げる瞬間に片端を放して石を飛ばす物です。

「それなら、3メートルの巨人ゴリアテと戦う事も、そんなに難しい事じゃないのでは?」
と思うのは早計で、実際にイメージして貰えれば分かりますが、
投げる瞬間に片端を放すという投げ方で、石が目標の近くに飛んでも、
狙った場所に当てる事は難しいです。

「石ならいくらでも落ちているから、何発も打てば大丈夫なんじゃ?」
と思いますが、3メートルの体を鍛えた戦士が、手には武器を持って、
大またで少年ダビデに駆け寄って来た時、
石をセットして振りかざすチャンスは難しいです。

「じゃあ、離れれば良いのでは?」
遠く離れた所から、少年ダビデが投げる石は、
距離が離れれば離れるほど、巨人ゴリアテにとって避け易いです。

勝利への可能性が低い戦いへ挑む、勇気を奮い立たせた「エラの谷」の話を、
イラクへ行き、父親に落胆される事を恐れながらも、勇気を振り絞って父親へ弱音を吐いた息子。
今まで夫に口答えしなかったのに、息子が軍人になる事を反対した、
スーザン・サランドン演じる妻などになぞらえて、父親目線である観客に問いかけてきます。

劇中、自分が間違った事はないと思っている父親は、息子を殺した犯人だと思い込んで、
一人を痛めつけてしまいます。
しかし現実は、被害者の父親である自分に、
協力的で良くしてくれていた人間が息子を殺していて、
犯人だと思っていた人間は、息子と一緒に同じ様な傷を負い、
克服しようともがいている人間でした。

そして父親の目線で物語を追っていた観客は、父親と同じ様に考えます。
思い込みで、「見誤った事」にすら気付かなかった自分が、
今までイラク戦争など、色々な事を支持して来た事は、果たして正しかったのか?

そして作品は、戦争に派遣する息子がいない様な女性の観客に対しても、同じ様に問いかけます。
その役目は、シャーリーズ・セロン演じる女刑事。

イラクとは関係ない位、遠く離れたアメリカの街で、
男性から卑猥な冗談を言われる中で働いている姿は、
キャリアウーマンが、感情移入し易い立ち位置です。

警察にDVの相談に来た妻を、シャーリーズ・セロンは、形通りの対応をして帰します。
妻が帰った後、どうして自分がこんな事をしなくてはいけないのかと、
同僚の男性刑事に不満をにじませます。

でも映画のラストで、イラク戦争のPTSD(心的外傷後ストレス障害)からくる夫のDVで、
警察に相談に来た妻は、夫に殺されてしまいます。

父親に救いを求めた息子からの電話を、「がんばれないか?」と答えた父親。
警察に救いを求めた妻からの相談を、「動けません」と答えた女刑事。

性別や年齢に関係なく、映画は同じ様に問いかけてきます。

基本的な流れは、1996年の湾岸戦争を扱った、『戦火の勇気』に良く似ています。

CourageUnderFire01.jpg
『Courage Under Fire』

物語の展開や見せ方など、『戦火の勇気』は、よく考えられています。
でも、湾岸戦争に対して、単なる舞台装置の域を出なかった『戦火の勇気』と、
イラク戦争の、是非について問いかけてきた『告発のとき』では、
どちらがテーマとしての重みがあるかは明白です。

とはいえ、映画としては、『戦火の勇気』もよく出来ている作品なので、
気が向いた方は見て観ると良いですよ。


『壊れたのは、請われた心●クラッシュ』

『今の国を作ったのは誰なのか?●ノーカントリー』

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テーマ : 考えさせられた映画 - ジャンル : 映画

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●こんにちは♪

ポール・ハギスの投げかけは上手いな~と思うのです。
でも、最近はアメリカが自問し、反省しているような作品がかなり続いたように思います。
そろそろ何か、それらの投げかけに対する提案みたいな作品が出てこないかな~なんて感じてます。
ミチ | 2008.08.07(木) 18:00 | URL | コメント編集

●コメント返信

>ミチさん
言われてみれば、続いている様な気がしますね~。
投げ掛けに対する提案という映画は、作家性を好まないハリウッドでは、
ナカナカ難しいんでしょう。

作家性で客が呼べる監督に撮って貰うまで、難しいのかもしれませんね。
Prism | 2008.08.09(土) 11:01 | URL | コメント編集

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2008/08/07(木) 17:19:45 | ☆彡映画鑑賞日記☆彡
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